実録 水漏れマンション殺人事件

ある朝、突然、天井から水が降って来た。原因はなんと殺人事件! 水漏れ、殺人、精神障害者、裁判‥‥これは、てんこ盛りの〈マンション被害〉と闘った〈事故物件の大家さん〉=私による本当にあった話です。

①すべては、一本の電話から始まった

f:id:RyokoHisakawa:20170515134055p:plain「もしもし、お宅のマンションが水漏れしているもんで、至急、来ていただけますか? ちょっとね、上階で事故が起きたみたいなんですよ……」

 201×年2月△日、早朝八時頃のことだった。里帰り中の実家でぬくぬくと寝ていた私は、一本の電話で叩き起こされた。電話の主は、私が一室を所有するマンションの管理会社。

 水漏れ? ちょっと、事故?

 まだ夢の中にいるような感覚を抱きながら、私は、とりあえず歯を磨いてマンションに急いだ。  そのマンションは、1992年に購入したものだった。当時、私は独身で出版社勤務。徹夜や泊まり込みの多い日々を送っていた。だから、実家から3駅、幼い頃から憧れていた街に新築マンションが出来た時、私は迷わずその一室を買ってひとり暮らしを始めた。

 ところが、マンションに住み始めてから数年後に出逢った結婚相手はアメリカ人で、2001年、私はロサンゼルスに移住することになった。

 その時に、マンションを売ろうとも考えたのだけれど、査定を頼むと2,000万円程度だという。購入時の価格は4,240万円。えーっと、それにローンも残っているからその分も引かなくっちゃで、そうすると、えーっと──。どんどん目減りする実入りに、終いには計算するのもバカバカしくなって売却案は却下。以来、賃貸していたのである。

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