実録 水漏れマンション殺人事件

ある朝、突然、天井から水が降って来た。原因はなんと殺人事件! 水漏れ、殺人、精神障害者、裁判‥‥てんこ盛りの〈マンション被害〉と闘う中で見えてきたゾ、ヘンテコリンな日本の真相。

⑦マンションは今日も雨だった

f:id:RyokoHisakawa:20170515134055p:plain 長崎が今日も雨かどうかは知らないけれど、私のマンションには今朝も雨が降っている。

   落水開始から3日目、水漏れはいっこうに止まる気配を見せない。職業柄、水漏れに慣れた『めでたい苗字』も管理人さんも、マンション専属の緊急サービス、修理修繕会社のA社社員も、みんな首を傾げるばかりだ。水漏れの元である上階の部屋は、あいかわらず警察が占拠する〈開かずの間〉で、落水原因を追及できない袋小路が続く。

 ここまで落水が長引けば、他のユニットにも被害が広がるのではと誰もが危惧したが……ニュートンは正しかった。引力の法則で、水は真下にある私の部屋に〈だけ〉落ちて来るのだった。

 ほんのひと晩のつもりで仮住まいに移った借主一家は、表情も暗く仮住まいとマンションを往復しては、避難させた荷物を少しずつ仮住まいに移していった。

 もはや誰もが長期戦の構えである。

 アメリカ移住後はライターとして暮らし、今回は単行本の長期取材のために帰国していた私自身も、仕事をすべてキャンセル。水漏れが止まったり、〈開かずの間〉が開いたら即刻動くべく、マンション・ロビーや実家で待機態勢を取った。

 

 ところで、これまで何度も「大家」という言葉が出てきたけれど、大家といってもこちらはへっぽこ大家である。家賃は10万3,000円だが、そこから管理費や固定資産税、時には修繕費が出て行くので、収支はとんとん、あるいは赤字といったところ。

 それなのになぜ、このマンションを維持しているかといえば、将来夫が定年退職したら日米半々で暮らしたいという夢が、私たち夫婦にあるからだ。

 私たち夫婦は渡米以来、日本における納税実績がほぼゼロだった。私の収入の大半は日本からの原稿料なのだけれど、少し専門的になるが「日米租税条約」なるものがあり、たとえ日本から収入を得ていても、税金はアメリカに払うシステムなのだ。米国に住み、米企業に勤める、米国人の夫は言わずもがな。したがって我々は、一度マンションを手放してしまえばローンを組めず、現金一括で不動産を購入するしかない身の上で、だからこそ赤字でもマンションを維持してきたのである。

 だのに、だのに……マンションは、あぁ、今日も雨だった……。

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