⑤明けて翌日、水漏れは止まらず
明けて事件翌日。前夜、私はけっこうしっかりと寝た。身体的な疲れもあったけれど、「水漏れなんてそうそう続かないさ」という気楽な思いもあった。だから、早朝に目を覚した時には、じきに『めでたい苗字』から「止まりました」の電話がかかってくるものと思っていた。
けれども、その朝は妙に静かに時間だけが過ぎていった。8時半、待ち切れなくなった私は、管理人さんが出勤する時間にあわせてマンションに向かった。今朝はマンション全体を取り巻く黄色いテープは外されていたものの、外から見てもまだ上階の部屋はテープで囲われていて、すでに大勢の警察官が活動していた。
ロビーに入ると、『めでたい苗字』の姿あり。
「早朝からお疲れ様です」
声をかけながら近づくと、彼は申し訳なさそうに言った。
「残念ながら、落水は止まっていません」
私は、小さくうなだれた。
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